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ACCESS POINT 3:第2話

ACCESS POINT 3:第2話

2話目。1stたくみの過去話です。

だいぶシリアス。
-2-
 


あの日はとても穏やかな日だった。

いつものように起きて、いつものように弟とケンカして、いつものように母に叱られて、

いつものように父が母をなだめる。

そうしていつものように学校へと向かったあの日。

空はどんよりとした曇り空で帰りには雨に降られるかもしれない、そう思いながら。

授業中、ふと今朝泣かしてきた弟の顔がよぎった。しかたない、帰ったら謝ろう。

そう思ってた。

そんないつもの毎日のいつもの光景。

それはいつまでも続く当たり前のものだと思っていた。



突然辺りがざわめきだし怪訝に思ってふと外に目をやると、あちこちから火の手

が上がっていた。

しかし状況が飲み込めず立ちすくんでいたがある言葉で我に返った。

「戦争が始まった!」

もともと内戦の多い国だったが暫くは小競り合い程度のものが長く続いていた。

しかし遂に戦いが始まってしまったのだ。

気がつけば自分は走りだしていた。家へ。家族のもとへ・・・。

そして辿り着いた我が家で見たものは鮮血の紅。

・・・・・・・次の瞬間頭の中は真っ白になった。
 
 





どれくらいの時間が経っただろうか。気付くと雨が降り出していた。

ほとんどの家は火事で焼け落ち灰となっていた。

辺りの地面は血で汚れていてふと自分の手を見ると自分もまた血で汚れていた。

よく辺りを見渡すと息絶えた人々が数えきれないほど横たわっていた。
 
 
 
 




あの日、アイツは生まれた。
 
 
 
 
 

 

今日はあの日と同じ雨。

「丁度いいや。」

たくみは橋の上に傘も差さずにたたずんでいた。

「今オレは幸せだよ?沢山の仲間に囲まれて。幸せすぎるくらいだ。でも・・・」

わかってる。本当はわかってる。自分が何を求めているのか。

作られた上辺だけの笑顔。悲しくても流れない涙。

あの日から戦場に身を委ねて生きてきた。

その中で浴びた大量の血で塗り固められてしまった感情。

もう自分の素顔なんて忘れてしまった。

「それともアイツがオレの素顔なのかな。」

今にも泣き出しそうな顔でそう呟くと左手に持っていた花束を川に投げ入れた。

家族の命日が近くなると鮮明に蘇るあの日の光景。

けしてそれは色褪せることはない。

「風邪をひくぞ。」

後ろから声がかかり傘が差し出された。声の主が誰かは振り向かなくてもわかる。

「泣いているのか?」

「泣く?そんなわけないでしょ。」

振り向いて「にっ」と笑った。泣くはずがない。だって自分は泣けないのだから。

「・・・・そうか。泣けないのならそれでもいい。だが俺の前で笑いたくない時に笑うな。」

「・・・・・・! ・・・・・サンキュ。」

そう言って彼の白衣に顔をうずめた。



胸の奥に何か温かいものを感じた。

今はそれが何なのかはまだ解らないけれど・・・・・・。
 

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