声なきに聴き形なきに視る 幻想水滸伝 2010年12月22日 坊ちゃんの真面目なお話。 父子の話。 ギャグ要素が全くありません。シリアス要注意。(え) 【声なきに聴き形なきに視る】 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「自分を越える瞬間をみることが出来て幸せだ」 と、かの人は最期にそう言った。 不思議と涙は出てこなかった。 いずれそんな日が来るのだろうと覚悟していたせいかもしれない。 無口で厳格な人だった。自らを語ろうとはせずただひたすら前を行く人だった。 思い出す姿といえば背中ばかりが思い浮かぶ。 ただ・・・一度・・・・一度だけ微笑んでくれたことがある。 あれはいつの事だったか・・・・・。 父、テオ=マクドールを討ち、部屋の窓辺で1人遥か遠い幼い日のことを思いだしていた。 『いつかボクも父さんみたいになるんだ!』 そう言っていた自分に父はこう言った。 『私のようにはなるな』 ・・・と。 『なんで?』 尊敬し憧れであった父に予想もしていなかった答えが返って来て、自分を否定されたように思えて 半分泣きそうになりながら父に疑問を投げ掛けた。すると父は 『誰かのようになるのではなく己を磨け。 誰かの言葉を鵜呑みにするのではなく、己の目で確かめ己の肌で感じろ。』 『???』 まだ幼かった自分は父の言葉の意味が解らなかった。 『ふっ。まだお前には難しかったか』 そう言って微笑んだ父の顔を今でもよく憶えている。 あぁそうか。 そうだ。そうだったんだ。 この『解放軍』という場所へと導いたのはテッドからソウルイーターを受け継いだからでもなく、 解放軍のリーダーであったオデッサと出会ったことでもなく、ましてや運命だの宿命だのとい う希薄なものでもない。 父だった。 無口で厳格な人だった。決して自分を曲げない人だった。 その父がこの場所へと導いてくれた。 父は自らが果たせぬ想いを自分に託していた。 数少ない言の葉の中に・・・・・交えたその剣に。 誰よりも望んでいたであろうこの国の未来を。 父の想いに気付いたその時、父が死んで初めて涙を流した。 「貴方の息子でよかった。父さん・・・・」 「ありがとう・・・」 [0回]PR