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声なきに聴き形なきに視る

坊ちゃんの真面目なお話。
父子の話。

ギャグ要素が全くありません。シリアス要注意。(え)

【声なきに聴き形なきに視る】
 

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「自分を越える瞬間をみることが出来て幸せだ」

と、かの人は最期にそう言った。



不思議と涙は出てこなかった。

いずれそんな日が来るのだろうと覚悟していたせいかもしれない。

無口で厳格な人だった。自らを語ろうとはせずただひたすら前を行く人だった。

思い出す姿といえば背中ばかりが思い浮かぶ。

ただ・・・一度・・・・一度だけ微笑んでくれたことがある。

あれはいつの事だったか・・・・・。





父、テオ=マクドールを討ち、部屋の窓辺で1人遥か遠い幼い日のことを思いだしていた。





『いつかボクも父さんみたいになるんだ!』

そう言っていた自分に父はこう言った。

『私のようにはなるな』

・・・と。

『なんで?』

尊敬し憧れであった父に予想もしていなかった答えが返って来て、自分を否定されたように思えて

半分泣きそうになりながら父に疑問を投げ掛けた。すると父は

『誰かのようになるのではなく己を磨け。

 誰かの言葉を鵜呑みにするのではなく、己の目で確かめ己の肌で感じろ。』

『???』

まだ幼かった自分は父の言葉の意味が解らなかった。

『ふっ。まだお前には難しかったか』

そう言って微笑んだ父の顔を今でもよく憶えている。





あぁそうか。



そうだ。そうだったんだ。



この『解放軍』という場所へと導いたのはテッドからソウルイーターを受け継いだからでもなく、

解放軍のリーダーであったオデッサと出会ったことでもなく、ましてや運命だの宿命だのとい

う希薄なものでもない。



父だった。



無口で厳格な人だった。決して自分を曲げない人だった。

その父がこの場所へと導いてくれた。





父は自らが果たせぬ想いを自分に託していた。

数少ない言の葉の中に・・・・・交えたその剣に。

誰よりも望んでいたであろうこの国の未来を。









父の想いに気付いたその時、父が死んで初めて涙を流した。



「貴方の息子でよかった。父さん・・・・」





「ありがとう・・・」

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