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HEART POINT‏:第1話

HEART POINT‏:第1話

「ACCESS POINT 3」及び「LOVE POINT」の続きです。

ここからはかなり真面目なお話に突入します。
が、改装前にアップしていたのはここまでです。
この先の更新は気長にお待ちください(え)
-1-


さくら亭での大暴露大会を終え帰路につく。

隣で妙な沈黙を続けるアレフと仲良く並びながら。

しかしその沈黙を破ったのもアレフだった。

「で、でもあれだよな。まさかお前がドクターと付き合ってるなんてな。

まー・・・・なんつーか・・・・あれだよな。」

おそらく頭の中で色々悶々と考えていたのだろうが、いまだにこの男の頭の中は

混乱中のようだ。

「軽蔑するか?それとも気持ち悪いか?」

「え?い、いや・・・そうは思わないけど・・・。ただ男同士でっつーのは考えた事

なかったからなんて言っていいんだか。」

まあそうだろう。女をナンパすることを日課にしている奴にすぐに理解しろと言

う方が難しい。

アレフと馬鹿やって「親友」なんて言い合うことも次第になくなっていくのだろう。

少し寂しいけどこれも仕方の無い事・・・・そんな事を漠然と考えていると

「あのさ、ドクターの一体どこが好きなんだ?」

「あん?」

「いや、ずっと考えてたんだけどさ。あのドクターのどこをどう好きになれるんだ?

笑いもしない会えば怒鳴ってばっかの仏頂面のあのドクターの一体どこが?!」

真顔で聞いてくるアレフ。

・・・・・・悩んでたのはそこかよお前。つーか本人聞いてたら確実に殺されるぞ?

「どこって・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どこだ?」

「オレに聞くな。」

「いや、ほんとに。さっきも言ったけどさ。オレのは恋愛とは違うから。」

「??」



ふっと通り抜ける夜風が心地よい。このエンフィールドという街に来てからもう2年経つ。

「知ってると思うけどさ故郷の内戦で家族を亡くしてずっと一人で生きてきた。」

「ああ。それならお前が1年旅に出て戻ってきた時に聞いたよ。」

旅から戻ってきた時変わらずに迎えてくれた仲間に家族の事を打ち明けた。

その後も変わらずにいてくれる仲間達。

けれど打ち明けたのは家族の事だけ。

家族を亡くしてどう生きてきたかまでは誰にも話していない。

もちろんトーヤにも。おそらく勘の鋭いあの医者の事だから気付いているだろうけど。

「 9才のガキがさ、戦争のど真ん中で一人取り残されてどう生きれると思う?」

「えっ・・・・し、親戚の家に行く・・・・とか?」

「家も焼かれて連絡先も知らないし知る手段もない。というより国中が混乱していて

他人の事なんて心配している余裕もましてや親を亡くした子供に手を貸す余裕な

んて誰にもなかった。」

戦争とは無縁のこのエンフィールドで育ったアレフにとって状況を想像するのは

容易ではなかった。

それでも理解しようと黙って聞いていた。

「生きていく為になんでもやったよ。盗み、殺し、売り・・・薬物にも手を出して殆ど

廃人寸前だった。」

それまで只その日その日を生きていくので精一杯だった。

盗み、殺し、売り、薬物。追われて逃げて捕まってまた逃げてまた罪を重ねる。

その繰り返しを続けてきた。

心を入れ替えてマトモな生活を・・・そう思って次の街を目指し辿り着いても待って

いるのは結局、同じ事の繰り返し。

希望も夢も目標も何にもなかった。

おもむろにポケットに隠し持ってた煙草を取り出し火を付ける。一息吸って静かに

煙りを吐いた。

白い煙りは静かな夜の闇の中にゆっくりと消えていく。その様子をじっと見ていたアレフが

「やっぱり吸ってたんだ・・・」

初めて知って驚いたというより勘付いていた様だった。

「ああ、煙草?気付いてたんだ?」

隠れて吸っていたから気付かれていないと思っていた。

別に隠そうと思っていたわけじゃないが嫌がる奴もいるだろうと人前では吸わない

ようにしていた。

「いや、オレは気付いてなかったんだけどアリサさんが・・・」

「え?」

思ってもいなかった、一番気付かれないようにしていた相手の名前を出されて言葉を失った。

「お前が一年旅に出てる間ジョートショップにはちょくちょく顔出してたんだけどさ、

そん時アリサさんが・・・
 
 




--------1年前、たくみが旅に出て少し経った頃--------

アレフはジョートショップを時々手伝っていた。アレフだけじゃなく暇を見つけては誰か

かしらがジョートショップに顔を出していた。

「たくみさん元気っスかねー?」

「あいつはいつも無駄に元気だろ。」

「アルベルトさんはいつも無駄にここへ来てるっスよね。」

「テディ!!てめぇ!!」

悪気のない、しかし的確なテディの言葉に怒りを露にするアルベルト。

「騒ぐんじゃないよ!騒ぐんなら出て行きな!」

テディを相手に大人気なく本気で格闘し始めようとするアルベルトを制したのは

手伝いに来ていたリサ。

「そうだよアル。喧嘩しに来たわけじゃないだろ。」

自警団第3部隊を存続させるべく奮闘中の葵がアルベルトをたしなめる。

「ちわー!!なんか手伝う事・・・・・って今日は人が多いな。」

「いらっしゃい。アレフくん。」

「また来たのかお前。」

ちょくちょくジョートショップに顔を出すアレフが気に入らないアルベルト。

「またいるのかお前。」

顔を出す度に大抵いるアルベルトにうんざりなアレフ。

しかしリサと葵に叱られたばかりという事もあり、アルベルトはそれ以上何も言

ってこない。

「そういえばアリサさん、あいつから何か連絡とかは?」

「ううん。」

「全く手紙くらいよこせよな。なー?テディ?」

「本当っスよー!ご主人様だって心配してるのに・・・ハクジョーっスよ!!」

「テディ言い過ぎよ?たくみくんだって子供じゃないんだものきっと元気よ。で

もちゃんと食事とってるかしら・・・それに・・・・」

「それに?」

「あのコももう少し煙草の量を減らしてくれるといいのだけれど。」

「「「「ええっ????!!!」」」」
 
「うそー!!たくみさん煙草吸うんだ!!!ちょっと意外~!」

「でもでもお兄ちゃんなら食わえ煙草とかカッコよくない?」

「あーw いいかも~ ww」
 
「たくみさん煙草なんて吸ってたっスか?全然知らなかったっス!」

「あいつが吸ってるところなんて見た事ないぞオレ。」

「だからアイツは信用ならねえんだよ。裏でそうやってコソコソしやがって。」

「もーアル!なんでそう嫌うのさ。」

「ま、煙草くらい驚く事じゃないんだしボウヤも隠れて吸う事もないだろうに。」

口々に感想を述べる面々。
 
「でさでさ。ちょっと暗い路地裏とかで吸ってて・・・・」

「あ!手はポケットにつっこんでね!」

「やーん w いいかもー w」
 

「でもアリサさんはどうしてその事を?」

「ふふ。だって臭いが洋服にいつもついているんですもの。私に気を使ってくれ

ていたのね。優しいコだから。」

「優しい?!アイツが?!アリサさん!騙されちゃだめです!!」

「アル!!!!」

「沢山のものを抱えてどうすればいいのかわからないのね。時々は頼ってくれる

と嬉しいんだけど・・・・。心配させないようにいつも一人で背負い込んで・・・あの

時みたいに弱い部分も見せてくれてもいいのにね。」
 
 
 
 



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「え?あの時?」

「アリサさんはそれ以上言わなかったけどあの時ってなんだ?」

「いや、オレにも心当たりは・・・・」

アレフの回想話の右側がものすごーーーく気になったがあえて無視しよう。うん。

「アルベルトの奴あの時は相当怒ってたぜ。今は相当まるくなったけどなー。

オレはてっきりお前はアリサさんの事が好きなんだと思ってた。アリサさんだって・・・」

「ハハッ。それはないよ。だってオレにとってアリサさんは・・・・・・」

そう言いかけた時ふいに思い出した光景があった。

「あ・・・・・・・・もしかして・・・・・」

「なんか思い出したのか?」

そうだ。『あの時』だ。

「このエンフィールドに来た最初の日、倒れてアリサさんに助けてもらったあの日・・・・・」
 
 
 
 


オレは次の街を目指しあてもなく彷徨っていた。けれど次の街へ行ってもどうせ

同じ事を繰り返すのだろう・・・・じゃあオレは何の為に生きているんだ?

それまでの荒れた生活で身も心もボロボロだった。食欲もなくし『もう死んでも

いいや。』そう思い、飲まず食わずにそれでも歩き続けた。

けれど歩く事も出来なくなり倒れ込んだオレはようやく死ねる、これでようやく

楽になれる・・・・これで・・・・

その時思い浮かんだのは家族の顔。長い間の荒んだ生活の中で正直家族の顔なん

てもう朧げにしか思い出せずにいた。

それでも家族で笑いながら喧嘩しながらただ普通に生きていたあの頃・・・・

もう戻れる事はないのだろう・・・・・戻りたい・・・・・あの頃に・・・・・・

誰かの顔が遠くに見える。その誰かが呼んでいた。必死で誰かを。

・・・・・・誰だろう?

ああ。呼んでいたのはオレか・・・。オレを呼んでいたのか。

「母さん・・・・。」

伸ばした手を掴んで彼女は一言、

「もう大丈夫よ。」

そう優しく微笑んだ。





「今思えばあれはアリサさんだったんだ。オレの覚えている母親はいつも怒鳴っ

てばかりいてアリサさんとは似ても似つかない人だった。

けれど・・・それでもオレにとってアリサさんは母のような人なんだ。」

思い出す母は怒鳴ってばかりだが、今思い返せばそれはとても愛情で溢れていた。

けれど幼かった自分はそれを五月蝿いとしか思えずにいた。今ならもっとしてあ

げれた事もあったはず・・・。

そう思えるようになったのはアリサさんに出会ったお陰だ。

だから両親に出来なかった事をアリサさんにしてあげたいと思う。

誰よりも幸せになって欲しいと願う。

けれどそんな思いに暗い影を落とすのは自分のして来た過去の過ち。

どんなに拭っても拭いきれない罪の数々。

何もかもを忘れて生きて行けるのならばどんなにいいだろう。

だが罪は罪。忘れる事も消す事も出来ない。

ああ。オレは怖いんだ。いずれはこの生活を手放さなきゃいけない日が来る、罪

を償わなきゃならない日が来る、その日が来るのが怖いんだ。

幸せだと感じれば感じる程に罪の意識が重くなる。重くて重過ぎて息苦しくなる。

「たぶんオレはトーヤに依存してるんだ。」

「依存?」

「あの人はさ、何も言わないけどきっと色んな事気付いてる。気付いた上で受け

入れてくれるから楽なんだ。オレは。・・・・それに甘えているだけなんだ。」

いっそのこと今までの罪を責めてくれれば、自分を突き放してくれればオレはき

っとこの街を離れられるのだろう。

だけどここの人達は何も言わずに包み込んでくれるから、忘れていたモノを思い

出させてくれるから離れ難くなってしまった。

本当なら1年前にこの街を離れ旅に出た時にそのまま帰らない選択だってあったの

に気付けばここへ戻って来ていた。

きっともう自分からは離れる事は出来ない。

けれどずっとこのまま幸せに浸る事は出来ない、そう思うのはこれまでに何度も

追われて逃げて捕まって・・・それを繰り返して来た自らの経験から来るカンなのだろう。





そのカンが現実のものとなるのはそう遠くない未来でだった・・・・
 


 

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